保険業界の法人営業は、他業界の法人営業と内容や成功のポイントなどが異なります。
保険業界へ転職を検討する際は、保険業界の法人営業の特徴について理解しておくことが大切です。
この記事では、保険業界の法人営業と他業界との違い、大変なこと、身につくスキルなどについて詳しく解説します。
目次
保険業界における法人営業とは
保険業界における法人営業は、生命保険営業と損害保険営業に分かれています。
それぞれの内容や特徴について詳しくみていきましょう。
生命保険
生命保険の法人営業は、経営者や役員、従業員向けの生命保険の新規加入や変更などを提案する業務です。
従業員はすでに個人で生命保険に加入している場合もありますが、別で法人が加入することで、保険金を死亡退職金として遺族に給付したり満期保険金を退職金の財源にしたりできます。
損害保険
損害保険の法人営業は、火災や地震など天災による事業財産の損害を保障したり、賠償責任や運送中・保管中のリスクに備えたりする損害保険の新規加入や変更などを提案する業務です。
オフィスの設備が天災で全て使用できなくなった場合、数百万円以上の損害が発生し、再起が困難になる可能性があります。
損害保険は、このようなリスクを抑えることで企業の財産を守る保険です。
他業界の法人営業との違い
保険業界の他にも、ITや広告、製造、自動車など、さまざまな業界に営業職が存在します。
保険業界と他業界における法人営業の違いについて詳しくみていきましょう。
従業員の利益に関係する
他業界の法人営業は、会社の利益に影響を与える製品やサービスを売り込むのに対し、保険業界の法人営業は従業員の利益に関係するものを売り込みます。
例えば、生命保険への加入によって死亡退職金として遺族に給付できるようになれば、従業員に安心を与えることができます。
また、損害保険の場合は、従業員が過失で取引先や顧客の製品を破損させた場合に損害賠償金を補填することで、会社と従業員の双方への影響を抑えられます。
保険業界の法人営業では、会社や経営者のみならず、従業員の利益につながる点を意識してアプローチすることが大切です。
決裁権を持つのは経営者や財務部門・人事労務部門など企業経営の基幹業務を担う人たち
保険業界の法人営業では、提案する保険商材導入の決裁権を持つのは経営者や財務部門・人事労務部門など企業経営の基幹業務を担う人たちです。
そのため、経営者や財務部門・人事労務部門の人にアポイントを取ることから法人営業が始まります。
難易度が高い
上述したように保険業界の法人営業の場合、提案する保険商材導入の決裁権を持っているのは経営者や財務部門・人事労務部門など企業経営の基幹業務を担う人たちです。
成約に至るまでのステップが多く新規契約を獲得することは容易ではありません。
決裁者は会社全体の利益はもちろん従業員にとって有益かどうかも検討したうえで契約の可否を決めていきます。
検討事項が多岐にわたることや、成約に至るまでのステップの多さから、保険業界の法人営業は他業界のものよりも難易度が高いと言えます。
保険業界の法人営業で大変なこと
保険業界の法人営業は、他業界の法人営業よりも大変との声が多くみられます。
その理由について詳しくみていきましょう。
潜在ニーズの抽出が必須
潜在ニーズとは、本人も気づいていないニーズのことです。
潜在ニーズを本人に気づいてもらうことで保険の必要性を認識させ、成約につなげます。
他業界では、潜在ニーズを十分に引き出さなくとも、本人が理解している顕在ニーズをくみ取ればアプローチできます。
一方、保険業界の法人営業では「保険に加入しませんか?」「退職金制度に活用できますよ」などと伝えるだけでは、加入してもらえないでしょう。
潜在ニーズを引き出すには仮説を立てて質問を投げかける方法が有効ですが、他業界の製品・サービスと比べて的確な仮説を立てることが難しいでしょう。
例えば、営業支援ツールの法人営業では、次の順に質問を投げかけることで成約につなげることができます。
・製品の営業では何に力を入れているのですか?
・営業担当者がたくさんいらっしゃると管理も大変ではないですか?
・そのままの管理を続けるとミスが増えるのではないですか?
・弊社の営業支援ツールであれば営業担当者の業務を効率化しつつ容易に管理できます。
これが保険業界の法人営業となると、保険と経営を絡めて、会社と従業員にとって有益であることに気づいてもらう必要があります。
・従業員満足度はどのように上げていらっしゃいますか?
・やはり給与や賞与の面を充実させるのが早いですよね。
・でも、給与や賞与は簡単には上げられないのではないでしょうか?
・生命保険に加入することで退職金制度を充実させ、従業員満足度を高められる可能性があります。
上記のような流れを想定できますが、アプローチの方法は潜在ニーズで大きく異なります。
アポの段階で断られることも多い
保険業界の法人営業では、経営者にアポを取る必要があります。
従業員よりも経営者の方がアポを取ることが難しいうえに、保険の営業であることを伝えると電話をすぐに切られてしまうケースも少なくありません。
この場合は、「貴社の経営課題を解決できる可能性がある」と伝えると、アポを取りやすくなるでしょう。
生命保険や損害保険が経営課題を解決できる可能性があることは事実のため、保険を提案されても悪い印象を与えることはありません。
経営状況の詳細な分析が必要
企業の経営課題を明確にするために、経営状況の詳細な分析が必要です。
分析が不十分だと、生命保険や損害保険の必要性を気づかせるアプローチができません。
上場企業においては四季報はもちろん、関連資料をすみずみまで閲覧し、経営状況をなるべく深く分析しましょう。
企業規模が小さくとも、Webサイトやプレスリリースなどからなるべく多くの情報を得ることが重要です。
保険に対する理解を促すことから始める必要がある
経営者の中には、保険の必要性を認識していない方が少なくありません。
保険の基本情報や必要性から説明し、理解を促す必要があります。
この時点で他業界の法人営業よりも成約までのステップが多くなります。
保険業界の法人営業で身につくスキル
保険業界の法人営業は大変なことが多いため、それだけ有益なスキルを習得できます。
次のようなスキルは、他業界の法人営業やコンサルティングなどでも役立つでしょう。
潜在ニーズを抽出するスキル
保険業界の法人営業は、潜在ニーズを抽出して気づきを与え、最終的に保険の成約へとつなげる必要があります。
潜在ニーズを抽出するスキルを習得できれば、他業界や他の代理店や保険会社に転職しても活躍できるでしょう。
経営の分析スキル
経営状況をなるべく詳細に分析することで課題の抽出が可能になるため、保険業界の法人営業を長年続けると経営の分析スキルが身につきます。
他業界の法人営業においても経営の分析スキルは必要なため、転職先で営業職やコンサルタントとして活躍できるでしょう。
まとめ
保険の法人営業は決裁者が経営者であり、潜在ニーズの抽出から多くのステップを踏んでアプローチしなければなりません。
成約につなげる難易度が高いため、潜在ニーズの抽出スキルや経営の分析スキルなどを習得できます。
今回、解説した内容を参考に、保険業界の法人営業が自身に適しているかどうか考えてみましょう。